傷跡・肥厚性瘢痕・ケロイド・陥凹(かんおう)瘢痕
傷跡にまつわる思い出に、良いものはほとんどありません。傷跡は消したいと思うのは当然です。
傷跡の治療は、どこまで治したいかという自分の中での目標が必要になります。
本来、形成外科でいう治療の最終目標は、傷跡が白くなることでした。しかし、白い線になったことでお化粧がうまくできなかったり、光の加減でその線が目立ってしまったりとお悩みが多いことも事実です。
傷跡にはたくさんの種類があります。
そのため、傷跡の状況によって治療も大きく変わってまいります。傷跡をきれいにする治療は形成外科の基本であり、様々な手術のテクニックがあります。しかし一方で、手術が不向きな傷跡もあります。つまり体の部位によって、あるいは傷の大きさ(または小ささ)により、手術した後の方がむしろ 目立ってしまう可能性があります。例を挙げると大きなニキビの跡でくぼんだものや、細かい複数の線状の傷跡がある範囲にわたって見られる場合などです。そのため、患部の状況を考慮しながら治療を選択し行っていく必要があります。
治療を開始する時期
手術を含む傷跡の治療法を選択するには、身体の部位や大きさ、また治療を開始する時期などを考慮しなければなりません。
傷跡の治療は、いつ受傷した傷跡なのかということでも治療内容や治療時期が変わります。
受傷後3カ月までは、傷跡が赤い時期で、傷跡が治ろうとして赤く硬くなっていきます。
受傷後3ヶ月から半年までは今度はその赤みが薄れて、また硬さも取れ始めて白くなっていきます。
この半年は体の自己治癒力を妨げるような治療は致しません。
状況によっては、半年~1年以上経過だけを診ていく場合もあります。
また普通より赤みが強く出てしまっている場合などは、半年待たずにレーザーなどで赤みを抑える治療を行う場合もあります。
患部がケロイドや肥厚性瘢痕になりそうな場合は、テープなどで治療を始める場合もあります。
治療を始めるとすると受傷後半年以降が一つの目安になるとお考え下さい。
またレーザー治療の場合は、常に標的色素が何であるか を念頭に置かなければなりません。つまり傷跡の色が何であるかによって使用するレーザーが異なり、形状によって設定なども大きく異なります。
< 傷跡治療ブログ内容の一例 >
傷跡の治療
傷跡の種類
傷跡は赤いもの、白いもの、茶色いものなど色を含め、大きさや盛り上がり、へこみの有無等の組み合わせが様々です。
<当院にご来院される方で多い傷跡の一例>
・術後の傷跡
・美容整形後の手術跡
・リストカット
・事故などの傷跡
・火傷跡
・外傷性刺青 → 外傷性刺青 参照
例 鉛筆を刺して芯が残ってしまった、
転んでアスファルトの色が残った 等
・色素沈着 → 色素沈着 参照
・ニキビや水疱瘡などの凸凹している傷跡
凹んでいる場合 → 陥凹瘢痕 参照
盛りあがっている場合
・ホクロやイボ除去後に盛り上がった、
あるいは凹んでしまった傷跡
・傷跡の赤み
・ケロイド → ケロイド 参照
・肥厚性瘢痕 → 肥厚性瘢痕 参照
・刺青除去後の境界線を目立たなくする治療
・手術跡や瘢痕のひきつれ
・古傷 (転んでできた傷跡、咬傷やひっかき傷など)等
適切な治療法を選ぶには、その傷跡の種類をよく把握する必要があります。
またレーザー治療の場合は、常に標的色素が何であるかを念頭に置かなければなりません。
つまり傷跡の色が何であるかによって使用するレーザーが異なります。
また患部の形状(盛り上がっている、凹んでいるなど)によって設定なども大きく異なります。
それぞれの要素をまとめると以下のようになります。
赤・・・傷跡が治癒してまだ経過が短い、または炎症が遷延化したもの。
白・・・傷跡が治癒して経過時間が長く、今後自然経過での変化が期待できない。
茶色・・・色素沈着を伴う傷跡。
盛り上がり・・・傷が治る過程で過剰に瘢痕組織がつくられた状態。
へこみ・・・組織の欠損が生じその上で上皮化した状態。
< 傷跡治療ブログ内容の一例 >
傷跡治療方法の種類
傷跡の治療は保存的治療、レーザー治療、手術による治療とに分けられます。傷跡の種類によって治療法が選択されますが、当然病院によって治療法に制約が生じます。日本橋Fレーザークリニックでは、3つ全ての治療法が行えます。
ただ、傷跡の治療はその傷を無かったことにする、生じる前の元に戻すものではなく(そのような治療法は存在しません・・・)、あくまでもその傷跡を目立たせている一つ一つの要素を取り除いて行く作業です。
ステロイドによる治療が中心となり、その他に内服薬も使用します。圧迫療法、テーピングも併用します。赤く、軽く盛り上がった傷跡には有効で、むしろ術後のフォローとして使うことが多いです。ただ、経過が長い白い傷、へこんだ傷跡には無効です。問題として、保存治療は時間がかかり、テーピングなど患者さんにも結構手間がかかります。ただその割には効果が限定的ですので、術後のフォローやレーザー治療との併用治療として用います。
色素レーザー、ヤグレーザー、炭酸ガスレーザーを用いて、ほぼ全てのタイプの傷跡の治療に用いることができます。治療効果も高く、傷跡の種類によっては手術では改善が期待できないものにも効果が出せます。治療は1ヵ月から3ヵ月おきに1回行い、治療回数は1回からものによって10回以上かかることもあるため、治療完了まで期間がかかってしまうこともあります。ただ全ての傷跡でレーザーが第1選択になるかと言えばそうではなく、手術の方が勝る場合もあります。
形成外科の歴史で、傷跡の手術は特別な位置を占めています。手術法、理論等古くから研究されており、傷跡が残らない(目立たない)ように手術を行うことは形成外科の基本です。線状の傷跡、幅や大きさがそれなりにあるものに対しては手術をお勧めする場合もあります。傷跡の手術は原則傷跡を切除し、その後目立たないように縫い合わせます。この時皮膚の伸展性を利用して皮膚のやりくりをし、傷跡に緊張がかからないようにすることもあります。したがって、皮膚に量的余裕のない傷跡や部位、切除範囲が広すぎる場合などはレーザーの方が安全で効果的です。また、小さく密集している傷跡等の条件であると手術は向いていません。手術はレーザー治療より多少なりともリスクを伴います。また適切なフォローを行わないと、せっかくの治療効果も減少してしまいます。
傷跡のレーザー治療
瘢痕のレーザー治療には、炭酸ガスレーザー、色素レーザー、Nd:ヤグレーザーを用いますが、主役は色素レーザーです。
色素レーザーは波長595nm (ナノメーター:10の-9乗メーター)の黄色い光のレーザーで、赤い色のものに吸収されます。
生体でいえば赤いものとは血液であり、特に赤血球が該当します。
赤血球にはヘモグロビンという物質が含まれ、これが赤血球の赤さの原因です。
このヘモグロビンにレーザー光が当たるとレーザーのエネルギーを吸収し光エネルギーから
瞬時に熱エネルギーとして変換され周囲に放出します。
この熱で血管壁を壊し治療効果が得られます。ただこの血管の壊し方はレーザーの設定で大幅に変えることができます。
白色瘢痕の場合は
完全に破壊というより強めの刺激として血管を壊し瘢痕内の正常に近いコラーゲンの産生を促します。
一方で赤い肥厚性瘢痕では血管周囲の瘢痕組織も含めて
破壊し、隆起そのものを取り除こうとします。
色素レーザーに炭酸ガスレーザーを併用することは多々ありますが、
炭酸ガスレーザーは色素レーザーの光の通り道を作ったり、
瘢痕内の色素レーザーを当てる層を露出するために使用します。
Nd:ヤグレーザーの使用は限定的で特殊な事情で色素レーザー照射が危険な時にのみ代用します。
レーザー治療 | 手術 | |
---|---|---|
治療回数 | 3回~(多数回の場合もあり) | 1回 |
治療期間 | 3ヵ月~1,2年 | 6ヶ月~1年(フォロー期間) |
治療間隔 | 1~3ヵ月 | - |
治療費 |
¥3,300~10,000(税込)/1㎝~(線状瘢痕) ¥3,960~8,000(税込)/0,3㎠~(面状瘢痕) |
顔 ¥33,000(税込)/1㎝~ その他 ¥22,000(税込)/1㎝~ |
使用レーザー | ||
可能性のあるリスク・副作用 | 発赤、色素沈着、 再発、瘢痕化など | 創感染、発赤、肥厚性瘢痕など |
(再診料、写真代、薬剤費などが別途かかります。)
肥厚性瘢痕の治療
肥厚性瘢痕とは読んで字のごとく厚みを持った、隆起した傷跡のことを言います。
色調は白から茶色、赤とその傷跡の古さ、成熟度合によって異なりますが患者さんの多くは赤い状態が気になり来院されます。症状は無症状のものが多いですが、痒みや軽い圧痛も決して稀ではありません。肥厚性瘢痕の形状はニキビの跡などの点状、手術の痕の線状、やけどの痕など面状とその傷が生じた原因によって異なります。正常皮膚まで浸食する真正ケロイドとは異なりあくまでも傷の範囲内での隆起ですのでケロイドとの鑑別は容易です。
肥厚性瘢痕が生じる原因としてよくケロイド体質という言葉を耳にしますが、一概に体質だけで決まるものではありません。
その傷の生じた経過、体の部位によっても異なります。肥厚性瘢痕とは体がその傷を治すにあたって傷を強くするために過剰に治ってしまった状態です。そのため肩、肘、膝などの関節部位などは傷が引っ張られるなどの物理的刺激、胸骨や恥骨等骨の真上の傷は硬いものに接しているなどの物理的刺激が原因で傷が肥厚化してしまいます。また、傷が治る過程の条件が悪かった場合(感染創、挫滅創、深めの熱傷や雑な縫合等)でも肥厚性瘢痕は生じてしまいます。つまり同じ人でもある一つの傷は白く平らな傷跡で治り、別な傷跡が肥厚化することもあります。
治療としては顔や腹部の外傷、手術後の肥厚性瘢痕であり、皮膚に余裕があって体質的に問題がない場合、手術が選択される場合もありますが、四肢など条件が悪い場合は保存的治療、レーザー治療の組み合わせが選択されます。肥厚性瘢痕の治療は段階を踏みます。まずは症状を伴うものであれば、症状がとれることを目的とし、その次に隆起を平坦化させ、赤みを取り除くことを目指します。時々陥ることのある錯覚ですが、赤く盛り上がった傷の治療を完了しても普通の肌になることはありません。白い平らな傷跡になります。この状態がまだ気になるようであればさらに傷を目立たなくする治療も必要になりますし実際に可能です。
レーザー治療 | 手術 | |
---|---|---|
治療回数 | 3回~(多数回の場合もあり) | 1回 |
治療期間 | 3ヵ月~1,2年 | 6ヶ月~1年(フォロー期間) |
治療間隔 | 1~3ヵ月 | - |
治療費 |
¥3,300~10,000(税込)/1㎝~(線状瘢痕) ¥3,960~8,000(税込)/0,3㎠~(面状瘢痕) (¥13,200~20,000(税込)/1c㎡~(面状瘢痕)) |
顔 ¥33,000(税込)/1㎝~ その他 ¥22,000(税込)/1㎝~ |
使用レーザー | 色素レーザー 炭酸ガスレーザー ウルトラパルス炭酸ガスレーザー |
|
可能性のあるリスク・副作用 | 発赤、再発、色素沈着など | 創感染、発赤、再発など |
(再診料、写真代、薬剤費などが別途かかります。)
ケロイドの治療
ケロイド体質という言葉を耳にしますが、よく外科手術の痕が赤く盛り上がることがあります。厳密には元の傷の範囲を超えないものは肥厚性瘢痕と言い、これ は手術が第1選択の治療法です。ケロイド(真性ケロイドという言い方もあります)は、原因不明の創傷治癒過程の暴走と呼べるものです。
小さな虫刺され、ニキビが次第に硬く、赤く盛り上がり、周囲の正常皮膚まで巻き込んで広がり強い痒みや、接触時の強い疼痛などの症状が現れることもあります。ケロイドの場合、手術は原則禁忌です。手術で切除してしまうと悪化し、術前よりさらに大きなケロイドを生じてしまうからです。例外として、大きいケロイドの場合、ケロイド内切除といって、ケロイドの中で部分切除を行いケロイド同士を縫合し、ケロイドを少しでもちいさくしてからその他の治療を行うこともあります。
放射線療法、ステロイドの局注、圧迫療法など様々な治療法がありますが、確定的なものはありません。 レーザー治療1回の照射でケロイドの軟化、平坦化、掻痒感の減少、大きさの縮小などが認められます。このレーザー治療と保存的治療(ステロイド局注、テープ剤、シリコン圧迫等 傷跡の治療参照 )と組み合わせた複合治療でさらに効果が高まります。ケロイドはどういうわけか、ある時期を境に突然生じ始め悪化増大の一途をたどり、症状も強い期間もあれば、 安定しほぼ無変化から縮小する期間もあります。また、このサイクルを数年おきに繰り返す患者さんもいます。
治療回数 | 3回~(多数回の場合もあり) |
---|---|
治療期間 | 3ヵ月~1,2年 |
治療間隔 | 1~3ヵ月 |
治療費 |
¥3,960(税込)/0,3㎠~ (¥13,200(税込)/1c㎡~) |
使用レーザー | 色素レーザー |
可能性のあるリスク・副作用 | 再発、色素沈着、発赤など |
(再診料、写真代、薬剤費などが別途かかります。)
陥凹(かんおう)瘢痕の治療
各種の瘢痕で治療が最も困難なものが陥凹瘢痕です。陥凹部が切除や縫合ですむものであればよいのですが、ニキビ跡や水痘の跡など複数個あったり、密集していたりすると手術も難しい状況になります。また炎症や外傷などによって欠損してしまった組織の体積を取り戻す、つまりなくなったものを作り出させることを目的とした治療になりますので複数回の治療が必要となってきます。
日本橋Fレーザークリニックでは、このような陥凹瘢痕の治療に、炭酸ガスレーザーと色素レーザーの複合レーザー治療を行っています。この治療に対する反応は個人差及び部位やその陥凹瘢痕の状況によって違いはありますが、概ね良好な結果が得られています。
レーザー治療 | 手術 | |
---|---|---|
治療回数 | 3回~(多数回の場合もあり) | 1回 |
治療期間 | 3ヵ月~1,2年 | 6ヶ月~1年(フォロー期間) |
治療間隔 | 1~3ヵ月 | - |
治療費 |
¥3,300~10,000(税込)/1㎝~(線状瘢痕) ¥3,960~8,000(税込)/0,3㎠~(面状瘢痕) |
顔 ¥33,000(税込)/1㎝~ その他 ¥22,000(税込)/1㎝~ |
使用レーザー | ||
可能性のあるリスク・副作用 | 色素沈着、発赤など | 創感染、発赤、肥厚性瘢痕など |
(再診料、写真代、薬剤費などが別途かかります。)
治療をされる方へ(治療前後にご準備いただくと便利なこと)
1.患部を出しやすい服装でお越しください。
2.治療後、部位や状況によっては
ガーゼが当たる場合と当たらない場合がございます。
お顔や首の治療の方は
マスク、サングラス、スカーフ、
つばの広い帽子などを
ご準備していただくとよいかもしれません。
3.赤ちゃんの治療後は、患部を触る可能性がありますので
ミトンなどのご準備があるとよろしいかもしれません。
4.治療の状況にもよりますが、
1週間ほど患部はお化粧等ができない場合がございます。
そのため治療を行う場合は、前後のご予定などもお考えの上
ご予約をいただければと思います。
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